軒の出がほとんどない立面と「ファサードラタン」と呼ばれる外壁の整然とした張り方がとても印象に残った住宅。 塀をつくらないオープンな外構計画によって芝生の緑と青い空が1:1 に見え気持ちの良い環境が伝わってくる。 対してプライバシーの確保から中庭形式を採用したとあるが、その中庭にむかって屋根が水を呼び込むように設計されている点が 気になった。各部屋への風の抜けや光の具合など実際の空間を体験してみたいと思った。

軒先を極限まで薄く収めHACO 樋と共に水平性を強調した緩やかに弧を描く変形方行の屋根が美しい。細い横張の板金も継ぎ目が 感じられずシャープである。
板金業者の技術の高さの勝利である。それとともに軒も低く抑えられ安定感を感じさせながらもシャープで軽快なプロポーションを つくり出している。応募書の端的なコメントがこの建築の良さをわかりやすく表現していてとても良かった。

屋根の魅力というよりも、外壁と開口部のあり方、外構デザインの巧みさに眼を惹かれた。
外壁の基礎が見えないように納められているところが、雑味のない外観の印象につながっているのだろう。
屋根はそれを邪魔しない程度に納まっていて、それが良いと思う。
くの字に曲がった開口部の納め方も上手い。

緑化された方形屋根が特徴的な建築である。木造緑化屋根という挑戦的な計画が実現できたのは設計施工一体だからこそで、施工者 としての技術的な知見が活かされた結果であると想像できる。一方、屋根以外に目を向けると、建物は45 度振って配置されており、 蛇籠による低い塀とのあいだに三角形の庭的空間を作り出している。この配置計画が、まちなみや室内からの見え方にどう影響して いるのかについても興味深い。詳細図や実物を見てみたい建築である。