母屋とカーポート棟の緩勾配の薄く押さえた屋根が周辺の風景に違和感なく溶け込んでいる。
外壁を地元の木材でシンプルに仕上げていること、プランを素直に形にして、
屋根を架けているところが品の良い佇まいに繋がっているのだろう。
出窓空間がチャールズ・ムーアのシーランチを思い出させてくれて、楽しそう。

2 階建ての切妻屋根の片方が伸び低い軒先を形成するへの字型の屋根はシンプルでありながらおおらかに住まいを包み込んでいる。
平坦になりがちなファサードを中央の一段下がったニッチ状の半屋外のテラス？が分節し、壁面を構成するルーバーと共に圧迫感を和らげ繊細で軽快な美しいファサードを形成、周辺の町並みに呼応し豊かな景観をつくり出している。
変形切妻屋根を支える繊細な立体格子が豊かな内部空間をつくっているのも秀逸である。

幾何学的な立面の構成とシャープな屋根のデザインからちょんと飛び出した正方形のハイサイドライトの可愛らしさに目を奪われた。
一方、室内を見ると平面的な操作だけでなく変形した屋根が生み出す空間の変化によって立体的に領域が分節されている。
変形した大屋根の面白さだけでなく内部の小さなスケール操作や丁寧なディテールによって、おおらかさと多様な豊かさをもった内部空間の心地よさが伝わってくる。優秀賞にふさわしい建築である。

線対象の切妻を少し変形することで立体に微妙なアンバランスを生み出す。このアンバランス性により単純なボックスに変化が生まれシンプルで美しい。 単純なボックスに穿たれた妻面の半屋外空間が人々を優しく迎い入れ、豊かなアプローチを演出している。雨のみちも秀逸である。 ルーバーに守られたテラスのある側は軒樋があり呼び樋がなくまっすぐ落ちる竪樋で雨を導いている。外壁のと同色で目立たない。 反対側は屋根と壁がスタンディングシーム葺で連続し、雨を導いている。樋がない納まりが形態のシンプルさを際立たせる美しい雨のみちである。

シンプルな切妻屋根の建築に、3 つの木のボックスを纏わせることで印象的な外観を作り出している。
外観上窓が極端に少なく、一見すると閉じた印象の住宅だが、外周に塀を設けずに敷地自体をまちに開くことで、生活空間を守りつつ、地域との接点を生む開かれた印象を作り出している。
切妻屋根の下の内部空間は光天井や中庭からの自然光により、外観からは想像し得ない光に満ちた住空間を実現しているところが秀逸である。

非対称の立面形状を屋根が外壁までぐるりと包み、屋根を白、外壁をグレーとすることで、 一般的な建築と配色が逆転しているのがこの小さな建築の大きな特徴である。
一方、内部空間にも外観の非対称系がそのまま現れ、大小の開口部から差し込む光が空間に奥行きを与えている。
こうした建築的操作がさまざまな「距離」を生み出し、町並みの中できらりと光る独特な存在感がもたらされた点を高く評価した。