雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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ディテール Detail

樋が“あらわし”で外部にありながらまったく樋に見えずファサードに溶け込む手法です。この章では、フレームに見える横とい、フレームや全体の構成要素の一部を構成する竪とい、外壁に埋め込み意匠として表現された竪とい、そして番外編ですが樋ではなく、壁面緑化が雨のみちとなり外観をつくるディテールについて述べます。

9-1横とい

ガラススクリーンの一部としてファサードに溶け込む雨とい/葛西臨海水族園(谷口吉生)1986 年

葛西臨海公園駅を出て、葛西臨海公園展望広場レストハウス(1995年谷口吉生設計)を横目に見て進むとガラスのドームが見えてくる。正方形のゲート広場から階段を上りプロムナードを進むと、海に向かって一気に視界が開く。この劇的な演出の中限りなく広がる水平線をバックに八角形の宙に浮いたガラスドームが私たちを迎えてくれる。

トラス構造の軽快なガラスドームは足元の太いアルミ丸柱の上にちょこんと乗っている。このプロポーションの差が軽快さと安定感を生み出している。ガラスドームに沿って雨が流れ落ちるが雨を受ける樋は全く見られない。
 


ドームを覆うガラススクリーンにはガラスを受ける横桟がある。当然最下部にもガラスを受ける横桟がある。しかしこの横桟は上部より太い。これが雨を受ける横といだ。また、柱上部のトラスに沿ってガラススクリーンの縦桟が柱まで降りているように見える。これがたてといで、横といで受けた雨は柱の中に導かれている。雨のみちが建築にとけこみ、そしてその建築が海と空にとけこむ風景をつくり出している。

9-2たてとい・横とい

1.ファサードを構成する樋/シュレーダー邸(ヘリオット・トーマス・リートフェルト)1924年

設計者のヘリオット・トーマス・リートフェルトが、最初に手がけた建築が「デ・スティル運動」の理念を具現化した建築として一大センセーショナルを巻き起こした「シュレーダー邸」だ。シュレーダー邸の外観は、幾何学的な面と線で構成されている。
街路に面する主な外壁面は南と西である。この2面は地面から建つ大きな壁の面、宙に浮遊したように軽やかな壁の面、屋根の水平面、そして原色(赤、黄色)と無彩色(白、黒)で着色された水平垂直の線で表現されている。それがリズミカルでありながら、ヒューマンなスケールをつくり出している。

構成要素の線の一つである雨といは、この大きな白い面に偏心して面の中にバランス良く配置され、大きな面の圧迫感を和らげるデザインのポイントとなっている。また、樋は壁面とほぼ同色であることが存在感を和らげる役目を果たしている。シュレーダー邸を実際訪れた時、遠景ではこの雨といの存在は全くわからなかった。近づいてじっくり観察し、デンデンがあることで初めて樋だとわかり、その巧みさに驚かされた。このように雨といも面と線の構成要素の一つの線として扱われ、雨といと感じさせない外観を創り出している。

2.壁面に一体となりとけこむ雨とい/コーマン邸(ルイス・カーン)1971年〜1973年

ルイス・カーンはフィッシャー邸、エシェリック邸をはじめとして数多くの住宅を設計している。その多くはピュアなキューブで雨といはない。その中でも樋があるのがコーマン邸だ。
コーマン邸はルイス・カーン最晩年の住宅で、フィラデルフィア郊外、約8000坪の敷地にレンガと木の箱でつくられた美しい住宅だ。北東の広大な草原を望むリビングブロックとスリーピングブロックがエントランホールを挟んで配置されている。フィッシャー邸に見られたピュアな幾何学(正方形)へのこだわりは薄まり、部屋と部屋の関係性に主眼が移っている。
リビングブロックの正面ファサードは、2層吹き抜けの木のガラスボックスを煙突を持つ垂直性レンガボックスが挟む。木とレンガという異種の素材を見切るラインがあり明快なファサードをつくっている。この見切りがファサードにとけこむ樋である。

リビングブロックの南東のレンガに挟まれた木の部分は2階がバルコニーになっている。一階開口の小庇のようなファサードと一体となった横といと細い竪といがバルコニーの雨を導いている。
スリーピングブロックは寝室が出っ張っている。その入り隅にとけこむように雨といが見える。カーンの珍しい樋は十分に検討されファサードにとけこんで美しい。

9-3埋め込み樋

1.柱を分節しファサードの一部となる雨とい/香川県庁舎(丹下健三) 1958年

繊細でありながらどっしりと安定感のある五重の塔のような美しさがある。
戦後の近代建築の特徴の一つが、柱、梁、軒という特徴を持つ、伝統的木割等の木造伝統建築のRC造による表現である。その代表の建築家の一人が丹下健三である。RC造は当然のことながら木造と比べ物にならないほど、その構造断面は太くなり、自ずとその外観は重厚感を持つ。丹下のその代表作の一つが香川県庁舎である。香川県庁舎は戦後の「民主主義にふさわしい建築」にというコンセプトのもと県民に開かれた建築をめざして、戦前の威圧的な形態ではなく誰でもが気軽に出入りできる親しみやすい自由な空間を表現した。県庁通りと敷地をスムーズに繋ぐピロティを持つ低層棟もその一つである。低層棟の後ろに控える高層棟は、跳ね出しの細い梁と分節された梁で支えられた水平のバルコニーが四周に巡り、何層にも重ねられた水平の庇で構成された塔のようである。

樋は分節されたダブルの梁の間を通り、柱と一体化し外観の一部となりとけこみ圧迫感を軽減している。この繊細なコンクリートの表現も親しみ易さをつくりだしている。道路正面に立つと、そのシルエットは伽藍配置の回廊の後ろにそびえ立つまさに五重の塔のようで美しい。

2.大壁面を分節する埋め込み樋/埼玉西濃運輸本社営業所(清水建設一級建築士事務所)1995年

物流倉庫は郊外に建てられることが多く、大空間を形成する外壁は経済性を優先少ない要素で構成されるため、その大きさと単調な壁面が近隣に圧迫感を与えている。道路に面する部分は物流倉庫なので基本壁で約60m×約14mの大壁面だ。屋根は片流れで道路側に雨は流れる。軒先は小庇状の三角形でシャープなスカイラインをつくっている。この部分が軒といだ。そこからのびる竪といは外壁面に埋め込み大壁面を分節し圧迫感を和らげている。埋め込むことで竪といは壁にとけこみ軒先の三角形の樋形状ともに美しいプロポーションを実現している。

壁面には円形のかわいい換気口がついている。フード内の四周には水返しがあり、外壁の角波鋼板との取り合いは形状を矩形とし、雨仕舞いに配慮した堅実なディテールとなっている。

9-4壁面緑化

壁面緑化の雨とい/むくどり第2保育園(袴田喜夫建築設計室) 2017年

保育園の増築である。増築のためか道路ギリギリに鉄筋コンクリート造の変形切妻の延長保育室が建っている。道路に近接する保育室のため道路に面して窓はなく、圧迫感を与え潤いのない景観を作ってしまう。

普通なら軒といと竪といで雨を導くが、ここではコンクリートの壁面に沿って蛇籠を設け蛇籠に雨を垂れ流している。まさしく壁面緑化になる蛇籠が樋の役目を果たしている。雨は植栽にも役立ちまちに潤いを与えている。

タニタメモ

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