雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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ディテール Detail

3章は「うける」。3章の後半では、前半に続き、屋根で受けた雨水を視覚化しつつ流れる雨を受けて地面に導く「うける」の事例について述べて行きます。前半は、柱頭にロート状の受け口を持つ縦といに屋根の雨を落とす形式の「うける」で、縦とい自体がユニークで美しい外観をつくりだす要素でした。後半では、むしろ雨の流れを十分に視覚化しダイナミックに受けて流す水盤が主役のディテールとなります。

3-2 水盤

縦といを落ちる雨と水盤の飛沫
牧野富太郎記念館 (内藤廣/1999)担当: 堀 啓二

 みなさんは牧野富太郎の繊細な絵の図鑑を一度は見たことがあるのではないでしょうか。この記念館は「日本の植物学者の父」と呼ばれた牧野富太郎の収集した膨大な標本と書物を収蔵し展示公開する施設です。

 この記念館は自然をこよなく愛した牧野富太郎の精神に呼応し、豊かな五台山の景観を壊さないように緩やかな尾根に添うように立っています。自然に溶け込む屋根に囲われた中庭は、緩やかなカーブを描く深い庇によって内外一体となった場となっています。

 軒は約2.35mと住宅スケール並みの低さで緩やかに上下し、軽やかさと浮遊感を醸し出しています。そこに取り付く縦といは中央で切り取られ宙に浮き、屋根の軽やかさを増しています。その下には雨をうける水盤があり、水棲植物が育っています。水棲直物を楽しみつつ、雨の日は縦といを落ちる雨と水盤の飛沫が視覚化され楽しい。水盤を通る風は冷やされ熱負荷を軽減するクーリングの役目を果たすなどを環境と一体となった雨のみちです。

ファサードの一部に見せる縦といから落ちる水
愛知県立藝術大学講義棟(吉村順三/1966)担当:新垣佑衣

 名古屋市郊外の丘陵地に建つ愛知県立芸術大学は、吉村順三が設計を手がけ1966年に開学した美術と音楽の総合芸術大学です。校舎は広大で豊かな緑地の中に環境を生かしつつ地形に寄り添うように分散配置されています。その南北の中心軸に講義棟はあります。講義棟は戦後モダニズムを代表する打ち放しコンクリートのピロティで講義室を持ち上げ、軽快さを生み出すとともに、中心軸でありながら学生たちの回遊性をつくり出しています。

 雨を導く縦といはピロティに呼応するように中2階位の位置で切られ、雨はその下にある煉瓦でできた受け皿に落ちるようになっています。煉瓦の受け皿はちょうどベンチぐらいの高さがあるが、地面と同じ煉瓦のため違和感が全く感じられません。縦といは壁から支持され真っ直ぐの状態です。講義室平面の縦ルーバー、ピロティの軽やかさと垂直性をつくりだす十字形柱と相まって、縦といから落ちてくるラインさえもファサードの一部となって美しい。

かわいさも生むV字彫刻のガーゴイル
千葉県ゐのはな記念講堂(槇文彦/1963)担当:関 笑加

 1963年千葉大学医学部85周年を記念して建てられた建築です。緑豊かなキャンパスの小高い丘に立ち「鎮守の森の社」をイメージコンセプトとしています。銅板屋根に覆われた、杉板本実型枠のコンクリート打放しによる力強く開放的な台形の梯型架構が、広場に向かって立ち、印象的な「鎮守の森の社」のイメージをつくりだしています。
 屋根の雨は台形の両側にはガーゴイルのように飛び出したV型の桝から垂直に伸びる金属のといで下部の水盤に導かれます。シンメトリーに配置されたこのといは社前面の柱のようです。

 前面にダイナミックに突き出す風除室の雨は、側面に飛び出るガーゴイルのようなV型の桝の穴から下部の水盤に落ちます。ニョキッとでたガーゴイル型の桝と水盤は雨を視覚化するとともに、彫刻のようでもあり平坦な壁にかわいさを生んでいます。

片持ちのといから4つのタンクへ
フレッチャー=ペイジ邸(グレン・マーカット/1998)担当:堀 啓二

 まさにオーストラリアの広大な草原に建つグレン・マーカットの住宅は雨のみちデザインの宝庫です。最大限に環境を享受するように東西に長く水平に伸びる平面に緩やかな片流れの屋根がかかっています。この住宅が建つ敷地も上水がなく、降水量が少ないオーストラリアにおいて屋根全面が雨を集める役目を担っています。

 屋根で集められた雨は片持ちのといにより、波板鉄板によりつくられた4つのタンクに導かれます。片流れの軽快な屋根と象徴的なタンクが、飲料水、生活用水としての雨水の重要性を表現しています。

「穴」から雨水を落とす
小笠原流家元会館(清家 清/1962)担当:今村真帆

 阪急御影駅から北に向かって坂道を登ると、周辺の豊かな樹木たちに溶け込むように旧小笠原流家元会館が佇んでいます。目を奪われるような多孔陶製ブロック、浮いたように見える軽やかな連続波形のアーチ屋根とRC造に御影石が埋め込まれた壁。印象的で美しいこの建物は、清家清による設計です。
 平成10年から生花の小笠原流三世家元である小原豊雲が収集した美術コレクションと豊雲芸術の再現作品を展示する豊雲美術館として使用されていましたが、現在は残念ながら一般公開はされていません。

 小笠原流家元会館のアーチ屋根の先端にはといがありません。雨は、屋根のアーチ下部に開けられた穴から水盤に落ちます。軒とい、縦といがないデザインは建物の印象を壊さず、雨が落ちる様には趣が感じられます。

京都国際会館
(大谷幸夫/1966)担当:堀 啓二

 美しい宝ヶ池を借景にしつつ、比叡山を背に、穏やかな山間に佇むように建っています。国際会議場というスケールが大きくなりがちな建築を、約68度傾斜した台形と逆台形を組み合わせた空間が、周辺の山々に呼応し圧迫感を緩和しています。また、台形・逆台形の組み合わせによる外観は、合掌造り、神社の社殿を彷彿とさせます。
 台形の大屋根の雨は下部の庇とも呼べる大きな横といにより集められ、端部の穴で開放され、巨大なお猪口のようなかわいい水盤に落ちます。建築自体が伝統的な様式をモチーフとしているように、雨のみちにも日本酒を受けるお猪口がモチーフになっているようでとても楽しい。

タニタメモ

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