雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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ディテール Detail

3章は「うける」。一般的には竪樋は、横樋や屋根面のドレンから連続して配管され、雨を地面まで導きます。「うける」は樋が途中で分節されたひとつの形式で、ふたつの手法があります。ひとつは横樋、谷樋、屋根面のドレンで導かれた雨水を、ロート状の受け口を持つ独立した竪樋で受け、雨を導く手法。もうひとつは竪樋を途中で切断し、宙に浮かせて水盤で受けながら地面に流す手法です。3章の前半では、樋自体が美しく水の流れもファサードの一部となる竪樋やロート状の受け樋を、次回の後半では、雨のみちを視覚化し受ける水盤のディテールについて述べていきます。

3-1 ロート状の受け樋

ファサードに溶け込むロート状のとい
八代市立博物館 (伊東豊雄/1991)担当:今村真帆

 八代城址近くの緑豊かな文教ゾーンの中心にある「八代市立博物館・未来の森のミュージアム」は、メタリックな建物のシルエットと木々の緑が調和しています。地下1階、地上4階の建物は1階部分に閉鎖性の高い2つの大きな展示室が設置されており、アプローチのゆるやかな傾斜をつくり出す盛土によりボリュームを押さえ、ヒューマンなスケール感と豊かなシークエンスをつくり出しています。ステンレスの屋根はとても軽やかで、その軽やかさを損なわないように樋はアプローチの反対側に設けられています。

 アーチの谷に集められた雨は、頂部がロート状になった樋で受け流しています。人目にあまり触れない裏ですが屋根を支えるスティールの柱のようにファサードに溶け込んだ無骨さのない樋です。

建物の簡素さに合わせた均整の美
別府電報電話局(吉田鉄郎/1928)担当:今村真帆

 吉田鉄郎によって設計された旧通信省旧別府電報電話局は、現在別府市南部児童館として使用されており有形文化財に登録されています。通信省で多くの建築を手がけた吉田鉄郎らしくレンガタイル貼りながら派手さのない落ち着いたモダニズム建築です。外観は面落ちした縦長の窓面と樋が均一に配置され端正でリズミカルなファサードとなっています。

 正面には中央玄関の両側に雨樋が配置されファサードの一部となりシンメトリーを強調しています。ロート状の口でうけた雨はそのまままっすぐ管を通り地面に流れます。至極シンプルですが、建物の簡素さと均整のとれた美しさです。

水平に伸びる屋根を支える細い柱のように
下館市立図書館(三上清一/1998)担当:新垣佑依

 この図書館は1988年に「下館市立図書館」として開館した後、市町村合併に伴い2005年に「筑西市立中央図書館」に改称、2000年に日本図書館協会建築賞を受賞しています。老朽化による旧下館市立図書館の改築は旧図書館の閉塞感を脱却し、敷地の東側を流れる勤行川と筑波山の豊かな自然景観と新図書館を取り巻く人・資料・情報などの要素を相互に循環させる計画として始まりました。
勤行川に向かって開かれた成人書架はガルバニウム鋼板の屋根、打放しコンクリートの壁にレンガの質感が重なりシンプルな中にもどこか暖かさを感じます。頂部がロート状の樋は下部のコンクリート支柱と2階レベルでアルミの金物により壁面より距離を持ってキャンティレバー形式で独立して軒先に立っています。均等に配された8本の雨樋は呼び樋で壁に沿う雨樋とは異なり、軽やかで水平に伸びる屋根を支える細い柱のように並んでいます。完全に雨樋もファサードの一部となり開放的なファサードをつくり出しています。

雨を受けながら流し、雨のみちを視覚化
安曇野市役所(内藤廣/2015)担当:関 笑加

 安曇野市役所は、5村の合併に伴い9カ所に分散していた市庁舎の機能を1カ所に集約、柱頭免震構造を採用し防災拠点としての役割も果たしています。構造はPCaPCとしプレキャストコンクリートの柱、梁にポストテンションを掛けて組み上げた耐震性・耐久性に優れた建築です。

 柱の位置でバルコニーのスラブを大きく切り、ストランドの緊張スペースを確保しています。このスリットを利用して雨樋を設けています。雨樋は各層で分節され頂部をロート状にして雨を受けながら流す、まさに雨を視覚化した雨のみちです。

 水平生=横の印象を強調するスラブと縦を強調する外装ルーバー・雨樋が相まって美しいファサードをつくり出しています。

 「2.ながす」にも登場したグレン・マーカットが設計したオーストラリアの広大な草原に建つ住宅です。鳥が大地に舞い降りた様な大小2枚の翼を広げた軽快な姿が印象的です。大地に向かって開いた2枚の大屋根は十分な日射を採り入れるとともに、中央は大きな谷樋となっていて降水量の少ないオーストラリアにおいて雨を集める装置となっています。

 降った雨水は住宅の妻面の両側に独立して立つ頂部に大きな桝を持つ竪樋により導かれます。大屋根とともに建物の雨水収集能力を象徴的に表現した形態となっています。

バタフライ屋根の谷部分からひと筋の線
アルヴァ・アアルト自邸・スタジオ(アルヴァ・アアルト/1936)担当:新垣佑依

 北欧の近代建築家として有名なアルヴァ・アアルトの自邸・スタジオはフィンランド、ヘルシンキの閑静な住宅街に建っています。その外観はこげ茶の木板張りと漆喰塗りの白いレンガのコントラストが緑になじみ、緑の木々に囲まれ「居心地の良い暮らし」を象徴するようにこじんまりと存在しています。スタジオ部分はバタフライ屋根にそった開放的な勾配天井で、住居部分とは間仕切りで仕切られています。コーナー窓とハイサイドの窓で太陽光を絞ることで室内は落ち着いた空間となっています。日差しが貴重なフィンランドにおいて、ハイサイドから入る低い高度の太陽光をバタフライ屋根にそった勾配天井で反射し室内にくまなく導いています。
バタフライ屋根の谷部分からすっとひとつの線として設けられた竪樋は、頂部がロート状に開きバタフライ屋根の谷樋の雨をうけ地面に導きます。樋として主張しつつも下部ではこげ茶色の板や石塀の色と同調しつつ、上部では白い漆喰塗りのレンガと相まってファサードの一部として溶け込んでいます。

鳥居をモチーフにした雨のみち
大鳥居神社 担当:関 笑加

 ダイナミックな切妻の大屋根と両端に独立して立つ2本の竪樋が印象的な大鳥居神社社務所は、主張しながらも緑に囲まれ、周辺のビル、商店の環境に溶け込み坂道の風景となっています。坂道に面して佇む2本の樋は頂部がロート状で大屋根の雨を受け止め、雨水を視覚化し雨を地面に導きます。

 この象徴的な樋は境内と坂道とを区画する鳥居の様でもあります。鳥居とは神域と人が住む俗界を区画する結界であり、神域への入り口を示すもので、一種の門です。この鳥居をモチーフにしたと思えるユニークかつ新鮮な雨のみちです。

タニタメモ

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