雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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ディテール Detail

“みせる”手法が横樋のみで雨は開放したのに対し、竪樋以外のものに添わせて地面まで雨水を見せながら流す手法です。代表的なものは伝統的な日本の建築に見られる鎖です。横樋から直接鎖等をたらすことで、呼び樋がなく屋根をスッキリきれいにみせることが出来ます。その他壁にニッチを設けた開放型の樋、竪樋の一面をオープンにしたコの字型の開放型の樋、壁面それ自体を雨のみちにするデザインと様々な手法がみられます。この章では、鎖、壁面のデザインのディテールについて述べていきます。前半では、鎖等、壁面(開放型樋)を、後半は壁面について述べていきます。

2-1 鎖等

屋根と一体となった樋と鎖樋が生み出す軽やかさ
「鈴木大拙館」(谷口吉生/2011)-鎖-

 とにかく美しい。金沢出身の仏教哲学者、鈴木大拙の考えを展示する展示空間と来館者が静かに思索する空間からなる文化施設です。緑に囲われ水盤に浮かぶ白いキューブと深い軒を持つ軽やかな屋根が静寂さを醸し出し豊かな思索空間を創り出しています。
 屋根は頂部にトップライトを持つ限りなく水平に近い宝形で、軒先は限りなく薄く仕上げられています。この軽やかさを創り出しているのが屋根と一体となった樋と呼びどいが必要ない鎖樋です。全体から見ると限りなく細い鎖は、晴れた日は太陽光によりきらめき光の帯となり、雨の日は鎖を伝わる雨水がファサードの一部となります。

縄でつくられた暖かみのある樋
「三井八郎右衛門邸」(1952)-ひも+石-

 第11代三井総領家当主・三井八郎右衞門高公が残した住宅です。戦後、昭和27年(1952)新たに麻布笄町(現港区西麻布3丁目)建設した建築です。当時は資材が乏しく今井町邸(第10代当主の邸宅。空襲により、蔵の一部を残して焼失)や京都など三井家に関連する施設の建築部材・石材・植物などが集められ建設されました。
 庇から延びた金属の箱樋の先端に設けられた鎖樋の一種です。一般的には金属がほとんどですが、ここでは縄が使用されています。縄は軽く風により暴れるのを防ぐため最下部に丸い石が縛られています。金属鎖のシャープさには欠けますが、和の建築に溶け込む、金属の冷たさと違ったホッとした暖かみとユーモアが感じられる樋です。

建物の四方に柱のような重みのある鎖樋
「太田記念美術館」(1980)-鉄輪-

 「太田記念美術館」は、浮世絵専門の美術館です。東京都渋谷区原宿駅すぐの路地裏を入ったところにあり、路地と美術館は石庭で緩やかに繋がれています。外観や展示環境は、原宿の賑わいからは想像がつかないほど静寂な雰囲気が保たれています。

 建物の四隅に周長約30センチメートルの立派な鎖樋がついています。半径約4.8センチメートルと半径約2.9センチメートルの大小の筒状のパーツが交互に鎖状に連なり、“雨のみち”となり雨はグレーチングの桝に落ちる仕組みになっています。
 まるで輪を積み重ねた金属の柱にも見えるずしりとした鎖樋が、建物のアクセントになっていて落ち着いた静寂さを醸し出しています。

植え桝と鎖樋の連続でファサードにつくる雨のみち
「AKIHABARA KADAN」(atelierA5/2013)-鎖+植栽-

 敷地は、間口が狭く奥行きが深い土地で、建て替えが進みペンシルビルが林立する無味乾燥な街並みです。その街並みに対して唯一街の顔となる間口約4メートル高さ約30メートルのファサードに壁面緑化でなくオリーブの立木による緑化を行っています。

 オリーブの立木はPCの植え桝に植えられ、PCの植え桝からは鎖樋が下げられ下の立木に繋がり“雨のみち”になっています。
 雨水を利用したオリーブの緑化は、熱負荷の低減をしつつ、潤いのある豊かなファサードを創り出しているとともに、この間口の狭さを感じさせない内部空間を創り出しています。

2-2 壁面-1(開放型樋)

石のファサードに石の開放型雨樋を
「石の美術館」(隈研吾/2000)

 「石の美術館」は那須山の噴火でできた柔らかな表情を持つ栃木県産の芦野石、福島県産の白河石でできた美術館です。その名の通りファサードは石の木端積みで、サッシの金属以外はほとんどが石でできています。
 一般的に竪樋は丸や四角の筒で閉鎖系の金属や樹脂でできています。木端積みで繊細でありながらも落ち着き感のあるファサードに対して金属や樹脂の樋は不釣合いです。同種の素材で樋をつくることがファサードを整えます。石で金属の樋のような小さな筒をつくることは難しい。ここでは、ファサードと同種の石でできた筒の一辺を取り外したこの字型の樋が設けられています。いわゆる開放型の雨樋です。ファサードと一体となった雨の流れが視覚化されたアートのような樋です。

すべり台のようなダイナミックな開放型雨樋
「市村記念体育館」(坂倉準三/1963)

 バレーボール、バスケットボールの体育館としての利用の他、演劇や展示会などホールとしても利用される多目的ホールです。大スパンの無柱空間を実現するため、ギザギザのある瓶の王冠のような特異な形態をしたRC造の折版構造の外壁と鞍形のHPシェル(双曲放物面シェル)の吊り屋根で構成されています。吊り屋根はむくりを持ちながら楕円の中央の両端に向かい下がっています。雨はここに向かって流れます。それを地面に導く樋がおもしろい。

 ここには斜めに突き出た梁があり、これがまるで滑り台のようなダイナミックな開放型の雨樋となり、雨を受け止め流し大きな円形の枡を通して地面に導きます。このように構造を利用した樋、外壁の折板そして吊り屋根が相まって構造自体がダイナミックなファサードをつくり出しています。

 さて、次回は2章の後半です。下記のようなラインナップで壁面自体が雨のみちとした壁面について見ていきます。

・群馬音楽センター アントニン・レーモンド
・リコラ・ヨーロッパ社工場・倉庫 ヘルツォーク&ド・ムーロン
・キョロロ 手塚貴春、手塚由比
・A 青木淳 (屋根と壁面が一体化した建築)
・サザンハイランドの住宅 グレン・マーカット
・出雲大社庁の舎 菊竹清訓

タニタメモ

 今回は、堀さんに、さまざまな鎖樋(くさりとい)を紹介していただきました。しかし、くさりといを採用されたことがある方は少ないと思います。

 街中で目にすることの多い、リング形状を連ねたくさりといは「シンプルだけど雨が飛び散ってしまうし、採用するには不安かなぁ」とか、和風の住宅や寺社仏閣で見かけられる、カップ形状のくさりといは「雨の飛散は少なそうだけど、装飾が主張していて、設計プランに合わないなぁ」とか、そんなイメージをお持ちの方も多いかと思います。

 そこで、タニタハウジングウェアでは、《雨の飛散が少なく、主張せず建築にそっと寄り添うくさりとい》を開発しました。主張はしないけれど見ていたくなる、そんな存在です。素敵な建築にさりげなく納めていただける、料理していただけるような半製品でありたいと考えています。

 雨とい、屋根、壁、金属外装など、雨にまつわることであれば、何でも気軽にお問い合わせください!「雨のみちデザイン」の質の向上に、少しでも貢献できたら幸いです。

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