雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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ディテール Detail

外壁に伝わる雨の処理の手法です。外壁を伝わる雨は外壁自体に付着した埃や開口部や笠木などの突起物の埃を拾い雨垂れとなり、外壁を汚すとともに劣化の原因となります。そのため開口部周りや大きな壁面、外壁天端はうまく水を切り外壁を保護する必要があります。この章では、外壁に伝わる雨水を効果的に切るディテールについて述べます。

11-1RC造独立壁

・躯体―目地

独立壁は基本両面、小口、天端が見える。そのため両面、小口、天端も雨水で汚れないようにする必要がある。一般的に天端に笠木をつけ、雨水を切るようにするが、笠木は有効だが天端が出っぱることで外観がすっきりせず乱れる。特にRC造打ち放しの場合に行う手法を紹介する。天端と小口の中央に目地を設け、天端は目地に向かって勾配を設ける。また、目地にも小口の目地に向かって勾配を設ける。目地という単純操作で壁面に雨垂れができず綺麗な壁面を保つ美しい納まりである。

・楠葉の家(山本堀アーキテクツ)1991年

尾崎邸は造成された住宅地に立つ家である。斜面地を造成し開いたため敷地がやく2m上がっている。2mのレベル差を利用してRC造の半地下にアトリエ、地上に2階建ての木造という構成である。そのため2m下がった道路がメインの入口となり入口を隠す壁、駐車場の擁壁などをRCの独立壁としている。独立壁はすっきり見せるため、笠木は用いず小口の中央に目地を設け雨のみちをつくり、壁面に流れる雨垂れを防ぎ美しい表情を作っている。

11-2開口部1―両端に立ち上がりのある水切り

開口部の下には水切りがつくのが一般的です。水切りは基本端部は切りっぱなしで水切り勾配そのままです。そのため勾配に沿った雨による雨垂れは防ぐことができます。しかし、雨は水切りの両端からも落ちます。その部分は壁面に沿って雨が伝わるため雨垂れにより汚れの筋がつくことが多いです。
 ちょっとした工夫で両端の雨垂れを防ぐことができます。その工夫とは、両端の立ち上がりです。両端に立ち上がりをつけることで開口部に沿って流れる雨は全て水切りに沿って流れ、両端の汚れを防ぎます。特殊な例として水切り端部の雨を受ける小さな樋を設けた例もあります。材料は石、アルミ、アルミ+樹脂など様々で、その事例をご紹介します。

■ 石

・小学館(日建設計)/2016年

世界最大の本街、神保町にある出版社本社ビル。コンセプトは「働き方をかたちにしたコンクリートの仕事場」だ。「出勤・退社時間に自由度があり、働く時間帯に大きな幅のある働き方」と「省エネ・快適性」を両立することを目指したビルで、胴部は上階のワークスペースを無柱のフレキシビリティが高い空間とし、最大限確保したマッシブな箱、脚部は既存躯体を山留めとして利用しつつ免震構造のクリアランスを確保するため足元を絞った形態、頂部の壁面緑化とともにシンボリックな外観を形成している。壁面には建物中央部になるほど窓が大きくなるデザインで、単調になりがちな外観にリズムを与えている。多数の窓があり、壁面は全面石張りではあるが窓の雨垂れはなく美しい。窓には石の小庇と水切りがついている。小庇の両端は目地分内側で押さえ、窓の目地により雨垂れが外壁に落ちないように工夫されている。下部の水切りは、小庇とは逆で開口部から少しはみ出て、はみ出た部分が立ち上がり雨垂れを防いでいる。とても理に適った美しい納まりである。

■ 金属(アルミ)

・ヒューリック青山第2ビル(青木純建築計画事務所)/2008年

SIA青山ビルディングは、ブランドが多く進出する商業のまち表参道と、渋谷駅のほぼ中間に位置する高層賃貸オフィスである。通常のカーテンウォール、横連窓のファサードとは異なり、つるんとした表面をもつモノリシックな塔状の建物だ。地上9階建てで、各階の天井高は4.9mと高い。天井高を利用し窓は、1.15m, 1.45m, 1.6m, 1.75m, 1.9m, 2.05m, 2.2mを一辺とする7種類の大きさの正方形窓をランダムに配置し、部屋の採光を確保している。ランダムな窓がシンプルなモノリシック外観と相まってシンボル性を高めている。壁面に穿たれた窓の雨垂れはない。下部の水切りが開口部の内々でZ型に立ち上がり雨垂れを防いでいる。内々で納める円形で見た時に正方形を強調している。モノシリックな外観を極立させる小学館同様に理に適った納まりである。

■アルミ+樹脂

某ビルの一般的な開口部である。よく見ると下部水切り端部に樹脂がついている。アルミサッシの下部の水切りは基本切っぱなしである。そのため端部から雨が流れ雨垂れを起こし外壁を汚す。端部に樹脂をかぶせることで、ちょっとした立ち上がりが生まれ、安全性と雨垂れ防止の役目を果たしている。単純で理に適った納まりである。

11-3開口部2-水切り端部の雨を受ける小さな樋

某RC打ち放しの住宅である。三方に抱きを取り下部に切りっぱなしの水切りをつけた、開口部の下部だけに金属が見えるRC造の典型的な納まりである。この場合下部の水切りは開口部から少しはみ出て納まるのが一般的で、そこで雨垂れが起こり壁面を汚してしまう。ここでは両端から流れる雨を受ける小さな雨といを設け、雨を流すことで雨垂れを防いでいる。設計者の細やかな仕事が見え好感が持てる納まりである。

11-4壁面

雨を切る住宅 ルイスカーン 
ルイスカーンの住宅には庇があまり見られない。ほとんどがシンプルな木張りのキューブでシンボリックな箱の形態である。それを美しく成り立たせるためにしっかりとした笠木、水切り、そして壁面の雨水を一度切る横リブが設けられている。スカイラインを構成する頂部はフラットバーなので極力シンプルに納めがちだが、ルイスカーンの住宅を見るとしっかりした笠木など重要なのがよくわかる。雨を切るという機能により、雨垂れの汚れを極力防ぐ笠木、水切り、そして壁面の雨水を一度切る横リブがシンプルな箱に豊かな表情を与えている。

・フィッシャー邸(ルイス・カーン)/1967年

フィッシャー邸はリビングキューブとスリーピングキューブの2つの箱を45度ずらした配置、陰影をもたらすニッチ状の風を採り入れる窓、壁面と同面の風景を切り取るFIX窓の適材適所の開口部と壁面を切る横リブにより、箱の単純さを軽減し、豊かなファサードをつくり出している。外壁は木張りであるが汚れは目立たない。雨垂れの汚れを防ぐ雨を切る手法を見ていこう。ひとつは頂部のしっかり出がある笠木のように見えるアルミの水切りである。屋根はパラペットのないフラットルーフであるため雨は外壁に流れる。アルミの水切りより頂部から外壁に流れる雨をしっかり切り汚れを防ぐ。二つ目は縦張りの木張りを分節する横リブである。横リブは板材の材料取りを可能にするとともに、壁面より出ていて、リブは頂部に勾配を持つ水切りのような役目を果たし、壁面の雨を切り汚れを防ぐ。三つ目はニッチ状の風を採り入れる窓の皿板状の水切りである。金属で先端の下がりも大きく、出もしっかり取られ雨を切る。開口部で話をした両端の立ち上がりもしっかりあり、雨垂れも防いでいる。このようなきめ細やかな配慮により今でも美しい姿を保っていると思う。

・シャピロ邸(ルイス・カーン)/1962年

シャピロ邸は、サーバントスペース(水回りなど生活をサポートするスペース)となる空洞の柱状の4本の中空柱が方形屋根の約5m角のサーブドスペース(居間・寝室などの主空間)を支えるユニットが繰り返され、将来の増築にも対応した構成である。基本この箱型のユニットがスリットを設け、独立して連続する構成である。サーブドスペースは中空柱の奥行き分ニッチ状に下がることで庇効果が生まれ主空間の日射をコントロールするとともに雨も防いでいる。このニッチ状の空間が陰影を生み豊かなファサードをつくっている。フィッシャー邸と同様に外壁は木張りであるが汚れは目立たない。

雨垂れの汚れを防ぐ雨を切る手法を見ていこう。一つ目は屋根先端の鼻隠しである。図面を見ると屋根は方形で軒はなく端部に横樋らしきものがあり、スリットのところにたてといがあるもののオーバーフローしてしまう納まりである。屋根の先端にはしっかり出のある水切りと鼻隠しがついている。これによりオーバーフローした雨をしっかり切り汚れを防ぐ。二つ目は2段設けられた横リブである。フィッシャー邸と同様であるがシャピロ邸は出も見付も大きい。壁面の雨をしっかり切り汚れを防ぐ。フィッシャー邸の竣工は1967年、シャピロ邸は1962年、様々なトライをおこなっている痕跡で雨の処理も真剣に考えていたと思われ頭が下がる。考え続けることが重要だと気付かされる例である。


最後に
最初は2年ほどでまとめる予定がだいぶかかってしまいました。多忙が一つの理由ですが、調べていくうちに様々な建築家の挑戦を発見するのが楽しく時間がかかってしまいました。「雨のみち」は建築寿命に直結するとともに建築のファサードに直結し、街の景観にも影響を及ぼします。この11章で取り上げた事例は建築家をはじめとした設計に携わる方々の努力の賜物です。建築の設計に解答がないように、「雨のみち」にも回答がありません。ぜひ設計の中で最初から「雨のみち」を考えて自らの解答を見つけるように設計してほしいと思います。11章で取り上げた事例「雨のみち」が皆様の解答を導き出すヒントになるよう活用していただければ幸いです。

タニタメモ

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