傾斜する敷地に対して屋根を分節し、床の高さを変えながら、暮らしを馴染ませ、佇まいをまとめている。
傘状の屋根を中心に折り重なる屋根が美しい。

驚くほど小さな三角形敷地に建つ三角形の住宅であるが、内部空間はその狭さを感じさせない豊かな空間が展開しており、各所に多様な居場所が丁寧につくられている。
外観はシンプルで可愛らしい佇まいとなっており、建蔽率の低さを生かした外構計画は美しく、石積み擁壁と植栽帯が町並みに寄与する景観をうみだしている。変形狭小敷地でもこれだけのことが可能であるということを示した好例である。

大屋根に貫入するような２階・・・決して構造的にもプラン的にも合理的ではないが不思議な、のどかな佇まいを創り出している。正面性を意識してボリューム感を抑えたのかもしれない。 物置を兼ねた門扉の小さな屋根と相まって屋根に意識がいく住宅である。

低く抑えた軒高が美しく上品な佇まいの建築。
擁壁を含め全体像として美しい環境をつくろうとしているのがよくわかる。
さらに箱樋に等ピッチで穴をあけ、雨水のカーテンとしているのが面白い。
屋根が環境に馴染むだけでなく新たな雨の風景を作り出している点を評価したい。