これぞ屋根コンに相応しい応募案。
大山に向かって角度をつけて開いた開口部と
暮らしを包み込む大屋根がこの住まいの価値観をひと目で伝えてくれる。

口の字型プランの角を切り落とすことで街並みに繋がる視線を確保しながら、そこに切妻屋根と片流れの屋根を組み合わせることで構造・施工ともに無理なくユニークな外観を生み出すことに成功している。
また、二階部分に鎖樋を使い、箱型の横樋で一旦受けてから壁側に寄せるディテールも秀逸。
全体として機能と形態がバランス良くデザインされた点が審査全員に高く評価された。

越屋根の効果は佇まいを和らげながらも内部にダイナミックな効果をもたらすこと。
それを最大限活用しつつ、暮らしをサポートする家具デザインの対比が楽しい。

高低差のある敷地に対して建築をセットバックさせて法面をつくり、緑の打サードとして都市との間につながりを生む緩衝帯を設けた手法は見事である。エントランス両脇に設けられた鎖樋も、雨の日の風景づくりを担っていることだろう。１、２階ともに地面からふわりと浮いているように見える断面で、透明感があり、軽やかな建築である。
事務所部分は開放的なつくりとなっているが、実際にどのように使われているのか、見てみたいと思わせる建築である。

高低差のある敷地と豊かな眺望に対して、半間ずつセットバックしながら３層のボリュームを組み立て、各階に向きの異なるリズミカルな屋根が架かる。少ない形態操作で可愛らしいかたちをつくりだしているのが良い。
また各階ごとに軒先の向きが変化することも内部に効果的な役割を担っている。
外観だけでなく内部空間の楽しさが生活の豊かさに繋がっている点を評価したい。

佇まいが美しい建築である。
道路側はひっそりとした軒の低い閉じたファサードで、地域の風景に溶け込んでいる。一方、海側は大胆な開口を持つ開放的なつくりとなっており、そのコントラストに目を奪われた。軒先のディテール、軒樋の位置、鎖樋と水鉢など細部まで丁寧に設計されており、海を望む美しい風景を十分に堪能できる住宅となっている。
海への連続性を生み出すウッドデッキや街からの視線を遮る植栽帯のデザインも素晴らしい。

低コストながら美しい空間性を追求した設計者の挑戦する姿勢が感じられた。
不均質に仕上げられた内部とは対照的に屋根や外壁の納まりは簡潔にデザインされている。
また素材を白で統一することで要素が均質化され、より内外の不均衡が際立ち不思議な魅力を建物にもたらしている。